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レイヤーで構成された光の住処 ― 北傾斜の土地にひらかれた、光と緑と空が重なるリビング ―

建築の視点_バウハウスデザインの建築事例「レイヤーで構成された光の住処」建築家/宮田恵美|空間を分節せず、光と素材で重ね合わせるように設計しました。吹き抜けを貫く縦長の窓、高窓からの自然光、木梁の陰影がそれぞれの時間を描きます。構造のリズムと光の階調が共鳴し、機能を超えた心地よさを生む住まいです。

レイヤーで構成された光の住処 ― 北傾斜の土地にひらかれた、光と緑と空が重なるリビング ―

南に迫る隣家と北へ傾く敷地という制約の中で、建築家・宮田恵実は土地を読み解き、北側に大きくひらかれた2階リビングを提案しました。シンボルツリーを抱くように計画されたこの住まいは、南の高窓から光を招き、北のルーフバルコニーから遠景と空を取り込む設計。家族の希望を織り込みながら「暮らしに豊かさをデザインする」というバウハウスの信念を形にしました。 水平ラインを強調したシルエットに、陰影を深く刻む素材の質感。白と木のコントラストが爽やかに映え、日中の光を受けて豊かな表情を見せる外観。住まう人の感性を映す“器”のように、周囲の風景と穏やかに調和する。 玄関へ導くアプローチは、緑と光が揺れる中間領域。常緑と落葉の樹木が四季を描き、石と木と植栽の質感が重なり合う。家に入る前に心が整う、穏やかなプロローグの空間。 間口の広い上がり框を中心に、姿見・シューズクローク・廊下が多層的に構成された空間。動線と収納が自然に一体化し、光と影がリズミカルに重なる設計の妙が感じられる。 吹き抜けの鉄骨階段が、外光を柔らかく透過させる。上階から降り注ぐ光が壁面に陰影を描き、時間の移ろいとともに表情を変える玄関土間は、この家の象徴的な場。 家族の小さな足跡が残る土間は、この家の原点。時間を経るほどに記憶が馴染み、住まいが「家族の歴史を刻む場所」であることを静かに物語る。 吹き上がる勾配天井と、素地のままの木梁が空間に温もりと奥行きを与える。素材が語る静かな存在感と、光のグラデーションが一日のリズムをやさしく包み込む。 サーキュレーターのゆるやかな風が、勾配天井の高低差をつなぎ、天然木の梁がリズムを刻む。非日常の広がりの中に、家族の時間が穏やかに流れる。 ダイニングに隣接する畳コーナーは、座る高さが変わるだけで心が落ち着く場所。家族が自然に集い、食後の会話や読書など、暮らしの余白を楽しむ空間。 高窓から差し込む自然光が壁面を優しく照らし、空を切り取るような開口が青を映す。視線の先に広がる空は、まるで一枚の風景画のように、日々の暮らしを明るく照らす。 空を間近に感じる開放的なルーフバルコニー。日差しや雨風にも強い、船舶の甲板に使われるウリン材を使用し、時を重ねるほどに深みを増す風合いが魅力。内と外の境を曖昧にし、空とつながる心地よさをもたらす場所。 朝の支度を自然光の中で行えるパウダールーム。明るく清潔感のある空間設計で、鏡越しに差し込む柔らかな光が、1日の始まりに心地よい静けさをもたらす。 外の光が降り注ぐ、縦長の窓をもつ吹き抜け階段。2階の天井まで伸びる開口が、時間とともに移ろう光を室内に描き出す。上下階をつなぐ動線でありながら、家全体に明るさと開放感をもたらす象徴的な空間。 勾配天井を活かしたロフトは、包まれるような安心感と静けさに満ちた小さな居場所。隠れ家のようなこの空間は、読書や思索、趣味の時間など、日常の中に穏やかな“ひとりの時間”をもたらしてくれる。 DESIGN 宮田 恵美 (一級建築士事務所MOO空間設計室) 建築家プロフィール 日々のくらしの中でたいせつにしていること、 心地よいと感じることを教えてください。 すきなこと、もの、時間をつつみこむ いちばん自分らしい家をいっしょにつくりましょう。 DETAILS 「シンボルツリーと空を抱く家」 ―北傾斜の土地にひらかれた、光と緑と空が重なるリビング―

所在地:横浜市青葉区

敷地面積:40.31坪(133.28m²)

延床面積:29.25坪(96.71m²)

家族構成:大人2人 こども2人 Ua値:0.49W/m²K ηAc値:1.5(W/m²)/(W/m²) ηAc値:1.2(W/m²)/(W/m²) C値:0.21cm/m² 耐震等級:耐震等級3(許容応力度計算) 施工:2022年 土地の特徴と建築家の読み解き 計画地は、南側に隣家が迫り、北側が低く傾斜する地勢を持つ土地でした。一般的には日射確保のため南へ開くことが望まれますが、宮田氏は逆転の発想で「北へひらく」選択を行います。北側に開口を設けることで、遠景を望みながら伸びやかさを得ると同時に、南側には高窓を配置して光を確保。これにより閉塞感のある敷地条件を、眺望と光に包まれる豊かな空間へと変換しました。 オーナー様の要望

● ご主人:家族との時間を大切にしながらも、在宅勤務時に集中できるワークスペースを望まれました

● 奥様:生活感を抑え、すっきりとした空間を好まれ、「収納力」と「プライバシーの確保」を重視

● ご家族共通:庭の代わりに中庭やルーフバルコニーでアウトドア感を楽しみたい、自然(光・風・緑)を暮らしに取り込みたいという想いがありました ご要望を反映した建築家の提案 建築家は、土地の特性にオーナー様の要望を重ね合わせて次のプランを提案しました。

● 2階リビングを採用し、北側の抜けを最大限に活かした開放的な空間を実現

● シンボルツリーを配置し、移動するごとに緑が視界に現れる計画とすることで、住まい全体に一貫した風景を与えました

● 南側の高窓からは四季を通じた日射をコントロールし、自然光を効率的に取込みます

● 収納計画では、土間収納やWICを充実させることで、奥様の「生活感を隠したい」という要望に応えました

● 畳コーナーを設けることで、お子様の遊び場や来客時の多用途なスペースを確保 暮らしの豊かさの実現 完成したM様邸は、土地の制約を逆手に取り、「北へひらく」という大胆な選択で生まれた家です。シンボルツリーと空、光の移ろいが住まいに豊かなリズムをもたらし、家族の時間をより鮮やかに彩ります。 家族それぞれが望んだ「すっきりとした暮らし」「集中できるワークスペース」「自然と寄り添う時間」が、ひとつの空間の中で矛盾なく共存しています。

シンボルツリーと空を取り込む外観デザイン

アプローチ俯瞰

吹き抜けの鉄骨階段

玄関ホール

家族の小さな足跡が残る土間

北側の眺望を楽しめる大開口の2階リビング

キッチンダイニング

2階リビング

ダイニングに隣接した小上がりの畳コーナー

高窓からの採光

北側にひらかれた空と遠景を楽しむルーフバルコニー

パウダールーム

パウダールーム

子供室

吹き抜け階段

勾配天井を活かしたロフト

宮田恵美 写真